愛すべきエンスーたち

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エンスーとは


寄り道のススメ

昨年末、シンガポールへ家族旅行した時のこと。
帰国便の出発は大みそかの午前1時。前日の夕方、ホテルに旅行社からの迎えがあり、免税店のビルに立ち寄った後、午後9時過ぎにチャンギ国際空港に着いた。出発まで3時間以上ある。空港内はデザインも素敵で、ショップの数も多くバラエティに富んでいて、広々としたレストランも。たっぷり時間はあるんだし、空港でシンガポール最後の夜を楽しみたい! そう思っていた私に夫は言い放ったのだった。
「とりあえず、搭乗口まで行こうや」
へ? なんで?? そんなに急がなくても、レストランで一杯やるくらいの時間は十分あるではないの。
ためらう私をよそに、荷物を下げた夫は子供たちを引き連れ、ずんずん搭乗ゲートへと進んでいく。
「え~っっ、まだ見たい免税品があるのに~っ!」
と思わず叫んだら、
「なら、あんただけ見とけば」
と冷たくつき放されたので、仕方なく夫の後を追って搭乗ゲートへ向かった。これがまた長い長い。たくさんの店舗が並び華やかだった入り口付近から、はるか遠くの搭乗ゲート。着いた途端に、手荷物検査があり、それを通過すると、もう後戻りできない。
とりあえずゲートまでついて行き、場所を指差し確認さえすれば、また入り口付近に戻って最後のタイガービールを楽しもうと思っていた私の気分は一気にブルーに。落胆する私の様子を見た夫が
「荷物置いたら、あんただけまた戻ってもええけん」
と言ったものの、またあの長い道のりを歩いて戻り、一人で食事しても仕方ないと思い、ふてくされたまま搭乗ゲート前のソファにどさっと腰を下ろした。それから出発までの長かったこと…。
時間もあるのだし、もっと楽しんでもいいではないかと私などは思うのだが、基本的にまじめで一家の長である夫はその責任感からか、ゲートの前に場を確保し、いつでも出発できる体制をとってから、搭乗時間までずっ~と読書していたのだった。

うちの夫は、車でドライブする時も目的地に向かって一直線。対する私は、途中で寄り道OK、目的外の道に入ってもOKな行き当たりばったり派。むしろ、規定ルートから逸れることを望み、楽しむ方だ。
うちの夫に限らず、総じて男性の方が、目的地に一直線に向かうタイプが多い気がするが、どうだろう? 買い物なんかする時でも、男性はきっちり目的買いで、買うもん買ったら帰ることを考えているが、女性はあっち見たりこっち見たりして場を楽しんでいることが多い。だから、後でもめたりするのだが…。

目的地にちゃんと到着し、予定した時間内に行って帰るという意味では、一直線派の方が確かにいいと思う。確実だし、安全だ。でも、仕事で移動するならともかく、休日のドライブくらいは道を外しても、いや、羽目を外してちょっとくらい冒険してもいいと思うのだが…。

先日、ある中小企業の経営者を取材した際、50歳前半の彼は言った。
「私は車で外出して社へ戻るときは、急いでいるときは別として、行きとは別の道を通って帰るんです。ナビもあるし、道に迷うことはまずないから、そうやってルートを変えると結構いろんな発見があるもんですよ」と。
そう! その心意気が大事なんである。道を変えれば発見がある。日常のほんの小さな発見が新しい発想を生む引き金になるし、何より感性がサビつかない。
寄り道、回り道を無駄に思うか否か。エンスーの皆さんはどうなのだろうか。

※この記事は実話をもとに書いたものです。