愛すべきエンスーたち

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エンスーとは


Iエンスー Vol.3 車をきれいに走らせる

ところでわたしはお茶が好きで珈琲が好きだ。
日本酒も大好きだ。
飲めるものはみな好きだ。

何の話かというと、経験の話だ。

昔からそりゃ飲むのは好きだったけど、飲み方がかわってきた時期がある。

ああおいしい!
どうしてこんなに美味しいんだろう!?
というお茶とある時出会い、
もっともっと知りたくなった。
産地を知り
おいしくいれる入れ方を知り
ちょっと丁寧に入れ
ほかのお茶にも興味がわき
中国茶、台湾茶、紅茶、煎茶、
いろいろ
「へー!」「うまー!」
などと飲み倒した。
珈琲もそうだ。
日本酒もそうだった。

ただ好きで飲んでたんだけど
いつのまにか
その経験が
わたしのなかに蓄積し、
ある「基準」をつくった。

それはとても大きな財産で、
新たに出会うお茶も、自分の中の基準に照らして
ああ、なるほど、と
しみじみ腑に落ちながら味わえるようになった。

私はだがワインのことは詳しくない。
産地だシャトーだ品種がどうの、というのが覚えられない。
(横文字に弱い。あと、先に酔っぱらうので)
だけど、
ただうまいうまいと飲んでたって覚えられやしない、
この葡萄はどこの地方の畑で育って
こういう品種だから、こういう香りでこういう味わいでと
自分の舌で記憶を重ねるからだんだん「基準」ができてゆくのだと
あるソムリエの方に言われたことがある
お茶で経験していたことなので、ああそうかと納得した。
そんなめんどくさい
美味しけりゃいいじゃんというのも正論だが
「基準」を持った舌は、美味しさの歓びを確かに増幅する。

車を運転するということも、そういうことじゃないだろうか。

車は便利な道具で、
らくちんだし、荷物もたくさん積めるし
自力でマイペースで好きなところに行ける
暮らしになくてはならないものだ。

ただアクセルを踏めば進むし(オートマだったらね)
ハンドルきれば曲がる。
免許とった人なら誰でも運転出来るのだ。

だけど、車はスピードが出る。
人力を超えるパワーを持つものを手にすると
やんちゃな気持ちに・・・・
(飛ばしちゃだめです。安全運転)

そんな若気の至りでいろんな乗り方をして
いろんな車に乗り換えて、
そのたびに自分だけの経験が蓄積していく。

やがて、自分の中にある「基準」ができたとき、
こんなことを言えるようになるのかなあと思う。

「クルマの楽しさって、ぶっ飛ばすことだけじゃないんですねえ。
 レーシングカーに近いほど、よくできたクルマで飛ばしても、あまりに簡単に速く走れちゃって、意外とすぐ飽きる」。

A氏はこうも語った。

「クルマをきれいに走らせる作業に没頭し、性能を100%開放させてあげる。
 原始的で、野蛮な、たのしみなんですよ。
 まあ、わたしは最高に贅沢な時間だと思ってますけどね」。

車をきれいに走らせる。

なんて素敵なフレーズだろう。

アクセルをコントロールし、
エンジンの音を聞き
路面の状況を感じ、
曲がる、止まる
すべてが調和して
その車との会話を愉しむ時間。

車を走らせることが好きで好きで好きだから
獲得出来た感覚なんだろうと思う。