
うちの実家には、以前、自家用車が4台あった。
弟のバイクを入れれば5台。うちは5人家族だったので、一人に1台という勘定になる。
実家は資産家でもなんでもない。ごくごくフツーのサラリーマン家庭。
ただ一点、農村部の兼業農家であることを除いては…。
一家に5台というのは、住む地域が農村部であるがゆえ。
だって、唯一の公共交通機関はバス。バスしかないのだ!
通学・通勤時間帯こそ、20分に1本くらいの割合で発着していたが、通常は1時間に1本というペースでしか走らない。さらに家からバス停までの距離が10分以上かかるのもざらで、1本乗り遅れれば学校に遅刻したり、雪でバスが遅れ、結局休んだという経験も少なくない。
だから、町内の若者は、高校を卒業すると、こぞって自動車免許を取得したものだ。それは必然。
車がないとやってらんないからだ。
そう。田舎では、車は「足」以外の何者でもない。
うちのようなフツーの兼業農家では、父親の通勤用の車が1台、農作業用の軽トラが1台というのが基本。
つまり、一家に2台は最低でも所有している(だって、そうしないと農作業できないし)。
子供が成人すると、それに子供の数だけ車の台数が追加されることになる。
うちは私を筆頭に妹、弟の三人兄弟だったので、みな、成人するとともに通勤用の車を購入して、それぞれ乗っていた。
田舎は敷地が広いというか、田畑のそばに空き地がいくらでもあるので、駐車場には困らない。
駐車場代もいらない。とにかく車は「足」なので、家の周りには家族の数だけ車が並ぶことになる。
で、それがフツーのことだと思っていた。
この話を都会っ子のエンスー男子に話したら、彼の瞳は軽い嫉妬の色をおびた羨望のまなざしへと変わった。
車好きにとっては、自分が好む、あるいは愛でる車をガレージにずらっと一式並べるのが夢らしい。
子供の頃、ミニカーを並べてはにんまりと悦に入っていたように…。
昔「時計も着替えないの?」というCMコピーがあったが、TPOや気分に合わせ、乗り換えられるほど複数の車を所有することが、エンスーの憧れであるようだ。
わからなくもないが…。維持費、大変だぞ~。