愛すべきエンスーたち

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エンスーとは


助手席、あいてます?

まだ、私が独身で勤め人だったころ。
同じ会社の営業マンと、車で客先に向かうことがあった。

じゃあ、出発ということで、助手席のドアをあけた私に彼は言った。
「あ、うしろに乗ってくれる?」
な、なんでや!? と一瞬思ったが、そのとき彼がすかさず言った。
「最近、婚約したんよね~。どこで誰に見られとるかわからんじゃろ?」

「な、なんであんたが婚約したけん言うて、私が助手席に乗っちゃあいけんのんや」
とのど元まで出かかったが、しぶしぶ後部座席に乗った。

噂によると彼の婚約相手は、あるお得意先の受付嬢らしかった。
その得意先は市内のあちこちに拠点のある地元でも大手の企業だったので、社用車といえども女性を助手席に乗せて走っているところをその客先の誰かに見られ、彼女の耳に入るのを彼はおそれたのだろう。

でもね~。社用車ですよ、社用車!
当時は男女雇用機会均等法も定着しはじめ、女性も総合職や営業でバリバリ活躍していた時代だ。社用車に男女が並んで乗っていたとして、だれがあやしむというのであろうか。
後部座席に乗るより、助手席で打ち合わせをかねて話しながら客先に向かうほうが、よっぽど自然な姿って~もんじゃないんですかい。

まぁ、これは私の若かりしころの寂しい思い出だが、車好きにとって助手席に誰を乗せるかというのは大きなテーマのひとつではないだろうか。
カッコイイ車にいかした彼女!?
車がデートを演出するアイテムであることは今も昔も変わりない・・・とステレオタイプに想像していたのだが、あるエンスー男子にこう言われた。
「助手席? 誰も乗せませんよ。一人でガッツリ走るほうがどれだけ気持ちいいか」

助手席に人がいると、気遣って運転する分、自分が思うような走りができないんだそうな。
ま、彼女に限らず家族を乗せているときも、そうそうやんちゃな運転はできない。

彼女も女房も子供も親も、なかなか自分の意に沿い、思うようになってはくれない。下手をすれば、助手席に陣取り、文句まで言う。
だが、車は違う。車好きが車をこよなく愛するのは、車は自分の意のまま思いのままにたぐれる存在だから。だまって自分の思うとおりに走ってくれる、従順でかわいいメカなのだ。

乗るなら、一人。かくしてエンスーたちは今日も車に走る。いや、逃げる?