
ある建築メーカーのパンフレット制作の仕事で、何軒かの新築のお宅を取材したとき、その中の一軒が、カーマニアのお宅だったことがある。
外観からはまったく普通の二階建ての住まい。標準サイズの普通自動車が玄関前のカーポートに駐車され、30代前半の夫婦と幼稚園児の子どもたちが暮らすのにぴったりの安からず高からずな一般的なおうちという印象。その時点では、カーマニアのお宅だなどとは気づきもしなかった。
が、家の中にお邪魔し、玄関からすぐのリビングに足を一歩踏み入れたとき「あっ」と思わず声が。
なぜか床が白と黒との市松模様。一般のお宅にしては、妙に斬新なデザインというか、どっかの美容室のような非現実な床ではないか。
「ま、若いご夫婦だし、おしゃれでいいじゃん」と、その時点ではやり過ごした。そういうテイストが好きな夫婦なんだろうとくらいにしか思わなかったからだ。
キッチンは真っ赤。これにも目を見張ったが、市松模様の床と結構マッチしている。「ま、奥さん若いし。きっと赤が好きなんだろう」と、ここでもやり過ごしモードの私。
リビング、ダイニング、キッチンとひととおり話を聞き、撮影も首尾よく完了したところで、玄関脇にあるドアが気になり「ここにももう一部屋あるんですか?」と聞くと、奥さんが困惑した笑みを浮かべながら、ドアを開けてくれた。すると、そこには・・・
でで~んとピッカピカの一台の車が! カスタマイズを前提に開発され、若者を中心に人気を博した小型トールワゴン車が鎮座しているではないか。
「これってガレージ!? リビングから直結してるんですか?」と思わず叫ぶ私に、薄く微笑む奥様。
「主人の夢だったらしくて、こういう家が・・・」
コンクリート打ちっぱなしの男っぽいそのガレージには、メタリックなブルーの車が収まり、休日、ご主人が使うらしい工具やオイル、リフトアップするための道具なんかが整然と置かれている。ボタンを押すとジャーッという音とともにガレージのシャッターがおもむろに開く。家に入るまで気づかなかったが、玄関のすぐ横がシャッターになっていて、そこがビルトインのガレージだったというわけだ。「もぉ、休みの日はここから出てこなくって」と奥様は苦笑い。
ガレージを見て合点がいった。リビングの市松模様の床は、チェッカーフラッグを模したものだと。真っ赤なキッチンもサーキットを走る車をイメージしたご主人の選択だったらしい。おそるべしカーマニアの家!
ガレージ専門誌もあるくらいだから、ガレージって車好きの男性にとっては「お城」なのね。
ん、それとも「男の隠れ家」?