
知り合いに、現役のレーサーと結婚した女性がいる。
もともと良家の子女で育ちと性格が良いうえに、中学卒業とともに自ら渡米し、あちらの高校・大学でハクをつけてきたバリバリの帰国子女。10代の頃から国際的なボーイフレンドも多く、仕事でも海外を飛び回っている彼女のこと、まず間違いなく外国人の男性と結婚するものと思っていた。ところが、結婚相手は純正の日本人と聞き、かなり意外だったが、職業がレーサーと聞いて妙に納得したのだった。
なぜなら、彼女は独身のころから「いつかはモナコ」と、将来はモナコに生活の拠点を置くという壮大な夢をはばかることなく口にしていたから。その彼女がモナコにゆかりの職業(?)レーサーの妻になると聞いたとき、「彼女、マジだったんだ」と、改めて彼女のモナコへの本気度を実感したのだった。
ベッピンの国際派ゆえ、恋のうわさに事欠かず、私も何人かのお相手のことを見聞してきたが、ある日、唐突に彼女から携帯メールがきたことがある。「今、仙台で~す!」 へ? 東京に暮らしているはずの彼女がなぜ、仙台? 疑念でいっぱいの私にお構いなく、彼女からのメールは「レーサーの友達と一緒に東京から高速飛ばして、おいしい牛タンのお店にやってきました♪」とルンルンの内容。
車で東京から仙台!? なんとも遠距離なドライブだが、相手がレーサーならさもありなん、とそのときは軽く受け流していた。その遠距離ドライブの知らせから数カ月後、そのレーサーの彼とご成婚と聞き、その展開の速さに唖然。しかもできちゃった婚と知り、呆然。もしや、ハネムーンベイビーならぬ、仙台ベイビーだったのだろうか・・・と余計な詮索までしてしまった私。
郊外の洒落たレストランで盛大に行われた披露宴では、いきなり、まっ黄色のイタリアン・スーパーカーで新郎新婦が登場(もちろん、運転手はレーサーの新郎)。参列者の度肝を抜いた。ま、こんな登場の仕方が嫌味でなく、さらっとできてしまうところがレーサー&セレブカップルのなせる技か…。
披露宴ですでにお腹が膨らんでいた彼女は郷里で出産することになっていたが、臨月まで東京で仕事をしており、気になることは郷里の産婦人科の院長先生に逐一メールで問い合わせていた。ある日、いつものように院長先生に様子を報告していたら、そばにレーサーのご主人がいると分かるや否や、院長先生は急遽話題を変更。身重の彼女の相談は後回しにされ、先生とご主人の車談義に延々とつき合わされたそうな。
そう、その院長先生も大のカーマニアで、彼女ら夫婦が初診察にきたとき以来、ご主人の職業を知った途端、目の色を変えて飛びついてきたらしい(だって、生のレーサーと話ができるなんて、仕事柄そうそうあることではないし…)。
かくして、二人の間には元気な男の子が誕生。レーサーのパパは子育てにも協力的で、今、とっても幸せにジュニアを育てている。夢はモナコへ──。世の中、こんな結婚もあるのね。