愛すべきエンスーたち

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エンスーとは


Iエンスー Vol.16 骨まで愛して(後篇)

好きになると、とことん知りたくなるというハナシの続き。
車好きにとっての「とことん」はどこらへんなのか。

雑誌やテレビを見てイメージトレーニングを積み、
毎週末ディーラーに通い詰め、吟味して吟味して車を買う。
       ↓
買った車を愛し、チューンナップやらドレスアップに腐心し、
ポテンシャルを引き出す走りで「人馬一体」を目指す。
       ↓
目が肥えれば、やはり乗るべき一台というのは誰もが心に描く。
       ↓
ええーい、十分な対価を払ってそれを手に入れる。
どうだ!車好きにとっての「アガリ」はこのあたりか。

ところがそこで上がらない困った車好きがいる。
そのひとりが、兄のA氏だ。

あるとき、実家のガレージで不思議なものを見た。
タオルの上に整然と並ぶ銀色の部品。
・・・これなに?
「ん?エンジン」

エンジンを構成する部品を一堂にご覧になったことはおありか。
それは何とも言えない、手術中に摘出した心臓を見たような、ちょっと見てはいけないものを見てしまったような気分だった。

エンジンなんかバラして元通りに走るの?
「あ、元通りに走らなくてもう一度バラして組み立て直したりする人もいる」。
って、エンジン解体するの流行ってるんですか!?

「車を分解してみると、いろんなことがわかるんだよ」。

ライトウエイトスポーツカーのエンジン分解に成功したのに気を良くして、
自分と同い年のスポーツカーも分解してみたらしい。

「エンジンとミッションは、ルマンで使われたレーシングカーと同じ。
 世界で一番になったレーシングカーと同じパーツがついてたんだ。
 パーツナンバーまで同じだった。
 もちろんチューンが違うから馬力は低い。だけどその分、20年走ってる」。

ほほー・・・確かにルマンで優勝した車と同じ部品でできた車に乗ってると思うと、ちょっとそれはロマンかも。

「ドアの鍵がうまくかからなくなったから、ドア分解してみたんだ」。
ドアもですか!

「そしたら、革の下にベニヤ板があって。
 89年式からセキュリティライトがつくようになったんだけど、土台の発泡スチロールを指で適当にちぎって埋め込んであったんだ」。

いやいや、そんなものすごい値段の車なのに中身がベニヤって!
それは怒りが込み上げる場面ですよね。

「いやいや。はー!なるほどねぇ、って思ったね。感心した。
そもそもここなんてレーシングカーなら外しちゃう部品だからね、すごいレーシーじゃない!ライトウエイト化を考えたらベニヤ板で十分だしね」。

この車は、どんな人が、どんな思いで何を考えて作ったんだろう。
分解すると、当時のエンジニアの手作業の跡がみつかる。
それを見て、意味を読み取り、「会話」をするのだ。
なるほど、そうなのか、と。

長い歴史の中で認められてきた「ブランド」の、理由をそこに見る。
それが、楽しいのだと。

「男子一生の愛だね」。
すがすがしく言い切るA氏であった。

※まるでわたしの作り話のようですが、このコラムはおそろしいことにすべてノンフィクションなんですよー。