
久しぶりに会った兄A氏に「最近のカーライフはどうよ」と声をかけると、
「うん、まあまあ。あ、サーキット走ってきたよ」という。
サーキットを走る日常がまあまあなのかどうかはともかくとして、どんな様子だったのか話を聞いてみた。
ことのきっかけはとあるディーラーからの一通のDMだった。
しかしそのブランドの車は所有していない。顧客でもないのになぜ?といぶかりながら見てみると「サーキットでのドライビング講習会に参加しませんか」というものだった。
そこのブランドの様々なクラスの車をいろいろ走り比べることができるという。
そのラインナップのひとつに目が止まる。1700万円ほどする、スーパーカー。
全国主要拠点のディーラーにはそれが展示してある。
かつてそのディーラーの近くを通勤路にしていた時には、「トランペットに憧れる少年」さながらショーウインドウにはりついて見ていた。
しかも、「ご希望の方はこちらにご応募ください、抽選でご招待」、とある。
ご招待=無料。
なんと!
十数年前、違うメーカー主催のドライビング講習会に参加した時には、清水の舞台からジャンプするつもりで十万くらい払ったのではないかと記憶している。それがご招待。
迷うこと無く応募。
しかし幾日か経ち、当選ハガキも届かず、ハズレちゃったかなと思っていたころ、ケータイに「ご当選です」との連絡が入る。小躍りするA氏。
当日の催行要領などの資料を営業マンが自宅まで届けてくれて説明を受ける。
「死んでも文句は言いません」と一筆書かされるが、これはまあサーキットを走る時のお約束。
そのドライビング講習会、催行は1日。朝10時スタート、夕方5時まで。
サーキットまでは遠い。無理して日帰りして翌日の仕事に差し支えては大変だ。
よって前泊することにする。
もうウキウキで隣県入り。
当日、朝10時前にサーキット到着。
すでに駐車場には何台か停まっている。いずれも主催メーカーのブランド車。
参加者は27名。想像より少ない。それに対してインストラクター3名。
チーフドライバーは、十数年前に参加した違うメーカー主催のドライビング講習会で教えてもらったあの人じゃないか。移籍してたのね。
10時からスタートしたドライビング講習会のメニューはこうだ。
オリエンテーション・座学
↓
ドライビングポジション
↓
ステアリングワーク
↓
ブレーキング
↓
【昼食】
↓
スピン回避
↓
スキッドコントロール
↓
サーキット走行
↓
修了証授与
本当は2日間かけて習熟する内容のプログラムだが、駆け足で1日で体験する。
午前中はドライビングの基礎であり、案外知られていないことのおさらい。
ドライビングポジションなんてゆったり楽に座ってりゃいいんじゃないのと思うがそうではないらしい。
正しいドライビングポジションとは、「運転感覚を働かせやすく、手足を中心とした体を動かしやすい姿勢」なんだそうだ。
以前どこかで習ったのだが、シートに深く座り、ブレーキを踏んでも膝がのびきらず、ハンドルをぐるぐるまわしても肩がシートから浮かないように調節するのだとか(細かいとこは失念)。実際その「正しい姿勢」で座るとずいぶん前のめりでびっくりする。
なんてったってこのドライビング講習会は「クルマを操ることの楽しさ」や「セーフティドライブに必要なもの」を学ぶ会なので、基礎こそ大事なのである。
午前のプログラムを終えて昼食。
このサーキット、かつてオープンしたころはバブル景気の真っ最中で、F1のワールドチャンピオンを呼んできて盛大なオープニングセレモニーをしたり、正会員の入会金1500万円で正会員専用ラウンジがゴージャスだったり、とんでもないことになっていたそうだ。時は流れオーナーも変わり、サーキット名も変わった。栄枯盛衰。諸行無常の響きでございますな。
で、昼食はそのかつての「正会員エリア」のラウンジで。とっても美味しかったそうだ。
そこには世界的に有名なモータースポーツカメラマンの手による写真がずらっと飾ってあった。若かりし日のアイルトン・セナの肖像も。
さて午後からは「低μ路(ていみゅーろ)」での制動体験と、いよいよサーキット走行である。
サーキットであの憧れのスーパーカー。
全開だった?
「いやいや、そんなことさせないよ。そんなことしたら片っ端からクラッシュして何台あっても足らない」。
ふーん、で、どうだった?
「あ〜〜〜〜、楽しかった! 、以上!」
しかし、その憧れのスーパーカー、欲しい!!とは思わなかったのだという。
(つづく)
※まるでわたしの作り話のようですが、このコラムはおそろしいことにすべてノンフィクションなんですよー。