
マスタングとコルベット。米国ではハイウェイを走行中に、この2台の車が同一方向に走行しているのを見かけたらご用心。
マスタング派とコルベット派は対抗心が旺盛らしく、ドライバーはアカの他人同士でも、たちまち互いに挑発し合い、競争が始まるのが定番だという。
「下手すりゃ、普通道でも競争しだすけ~ね~」と米国在住の妹は呆れ顔で言う。
かく言う彼女の夫は妻と子どもと同じくらい、マスタングを愛してやまない米国人。過去に何度か、彼らのスィートホームを訪れたが、暇さえあれば、ガレージで愛車のマスタングをいじっていた。
米国では、州により規制も異なり様々だが、日本のような車検制度はない。したがって、米国人のDIY大好き精神は、車に関してもいかんなく発揮される。
パーツストアも豊富にあるので、日本ではディーラーでしか手に入らないような部品もごく普通に手に入ってしまう。ちょうど、日本のお父さんがホームセンターで道具や材料を買いこみ日曜大工に励むように、義弟も部品をちょこまか調達してきては自宅のガレージにこもり、思う存分、愛車をいじり倒している。
彼は最近まで67年式マスタングを所有していた。67年式といえば、約40年前の車。実際、相当おんぼろだったらしいが、マニアの雑誌に出したところ、ほどなくして買い手が付いた。どんなにボロでもオリジナルのボディであることと、手に入りにくいパーツが付いていたことが買い主の心に火をつけ、かなり離れた州から、わざわざトレーラーを引いて受け取りに来たというから、マニア、恐るべしである。
50年、60年代の車を今の日本で見かけることは極めてまれだが、米国ではこの手のオールド・カー好きも少なくない。40~50年前の車といえば、価値の分からない人にとってはほとんどゴミ同然の代物。行き場もないまま、長年、庭の片隅に放置され、ぼろぼろの哀れな姿をさらしていても、オールド・カーマニアにとっては“お宝”だ。目ざとく見つけ、持ち主の家に「売ってくれ!」と直に交渉に行くというから、マニア魂もハンパではない。
日本では気の遠くなるような距離でも、米国人は平気で車で移動する。日常生活でも、通勤はもちろん、子供の学校への送迎やスーパーへの買い物など、国土の広い米国で車は、日本以上に「生活の足」であり、なくては日常生活が成り立たない。
そんな中で育まれた米国の車好きの層は厚く、多様だ。
でも、好きな車にそそぐ愛情と情熱は洋の東西を問わず、やけどするほど熱いのだった。
※この記事は実話をもとに書いたものです。