愛すべきエンスーたち

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エンスーとは


ミッドナイト・ドライブ

深夜あるいは早朝、家族がすやすやと眠っているのを確認し、家を抜け出す。
あたりはまだ真っ暗。車の中へそ~っと滑りこみ、エンジンをかける。最初の行先は、24時間営業のファーストフード店。ドライブスルーで熱いコーヒーをオーダーし、すすりながら、がらがらにすいた道を走る。

こういうときのBGMは断然、ソウルミュージック! 普段は娘たちにせがまれて嵐のベスト盤をしぶしぶ聴いているか、ラジオをつけっぱなしにしているのだが、アニタ・ベイカーの「Sweet Love」なんかを聞きながら、暗闇を走る。

人もいなければ、車もほとんど走っていない夜明け前の道。自宅から事務所まで、ほんの15分ほどの行程を、こんな風に一人っきりで車を走らせるのが大好きだ。
車あってこそのプチ逃避行。忘れ物を事務所に取りに行くだけのことだったりするのだが、好きなCDをボリューム大きめにして聴きながら、どっぷり自分ワールドに浸って暗い道を走るのは、とっても気分がいい。

独身時代は、昼夜問わず好きな曲を聴きながら西へ東へと車で好きな所へ行っていたものだが、結婚して、家族が増えると、自由奔放に一人で遠出することもなくなり、保育園や学校、事務所へと行く先も生活に根出した現実的な場所へと変わってしまった。後部座席には、もれなく駄菓子をもぐもぐさせているわが子が鎮座している。

休日は助手席に座ることも増え、運転席から見るのとはまた違う風景を目にする楽しさと、居眠りできる快楽も覚えたのだが、時々、やっぱりこうして一人っきりでハンドルを握りたくなってしまうのだ。
それも深夜か早朝に。
圧倒的に走っている車の数が少ないので、すぃ~っと走れる爽快感と、いつもの道が闇に包まれ、昼間とは違う街の表情を垣間見ることができる非現実な感じがたまらないのだ。

夜が明ける頃に雑用を済ませて事務所から戻る。うすぼんやりと明けていく空の下、西広島バイパスや商工センターの道をぎゅい~んとひた走るのもまた快感。自宅に戻り、玄関のドアをそ~っと開けると、もう夫が起きていて、いれたてのコーヒーのいい香りがする。

「また一人でどっか行っとったんね」と聞かれ
「ま、まあね。事務所に忘れ物取りに…。やっぱり深夜のドライブは最高じゃね」と答える私。
「ええ加減、一人で好き勝手しようるのに、まだ一人になりたいんかい、あんたは…」とため息をもらす夫。
すまん、夫よ。きみの不肖の妻は、車がある限り、このプチ逃避行だけはやめられそうにないのだわ。

※この記事は実話をもとに書いたものです。